Kaggle ASHRAEコンペ 上位解法まとめ・振り返り
kaggle その2 Advent Calendar 2019の19日目の記事です。
(空いていたのでお邪魔させて頂きます。)
Kaggleで開催された ASHRAE - Great Energy Predictor III についてまとめます。いろいろと荒れたコンペではありましたが、時系列データの取り扱いに関する勉強としてまとめておきます。
なお、私の結果は約3500チーム中290位(銅圏内)→2053位と大シェイクダウンでした。クソ雑魚ソリューションではありますが自身の振り返りのために最後に記載します。ご意見やマサカリ等頂けると嬉しいです。
コンペの概要
- ASHRAE(アメリカ暖房冷凍空調学会)がホストであり、2016年に使用した電力(電気,冷水,蒸気,お湯)と気候のデータから、2017年~2018年に使用する電力を予測する問題
- Timestampは1時間毎。約1500の建物に対して、それぞれ予測する
- 建物にはそれぞれsite_id(全16サイト)がついており、気象データはsite_id毎に与えられる
- 評価指標はRoot Mean Squared Logarithmic Error
- 施策の効果の検証に使うのがコンペの目的らしい。 (施策を行わなかった場合を機械学習で推測し、比較対象に用いる)
- 欠損や外れ値が多く、かなりノイジーなデータセット。同じサイト(=同じ気候)でもbuilding_idによって挙動が異なるように見える
データリーク
コンペの途中で、全16のsite_idのうち、5つのsiteにあるbuilding_idの電力のデータがweb上に存在することが判明
運営は「リークがあった5サイトはprivateには含めない」と発表したものの、データセットの変更等は行いませんでした
このリークに失望し、コンペから撤退する人も多かったようです
しかし、有志によりリークがまとめられたため、既知のデータセットとしてコンペを進めることが可能だった
そのため、本質的ではないパズルやスクレイピング技術を競うコンペとはなりませんでした
リークをまとめあげたIsamu Yamashitaさんがずっと金圏内にいたため、もう他のリークはないと考えて進めることができました(しかも結果的にYamashitaさんが優勝!本当にすごい。)
個人的には2016年のデータのみでは手掛かりが少なすぎたので、ヒントが与えられてむしろやりやすくなったのでは?と思っていました。
(とはいえ、運営にはリークしたデータを正式にまとめたり、コンペの途中でLBからリークの結果を取り除いたりといった対応はして欲しかったですが。。。あとコンペ終了後もprivateLBがなかなか公開されなかったのもキツかったです。)
有用だった公開カーネル
- ASHRAE: Leak Data Station
- What's your CV method?
- ASHRAE: Half and Half
- Validation Strategyは2fold(1~6月・7~12月で分割し、学習・評価に用いる)が良さそうと指摘されていました。
- Ashrae: simple data cleanup (LB 1.08 no leaks)
- データクレンジングに関するカーネル
- ASHRAE - Missing Weather Data Handling
- 気候データのクレンジングに関するカーネル
- ASHRAE: Leak Validation and more
- リークデータ無しで学習・testデータの予測を行うモデルを数種類用意し、リーク部分の精度が良くなるように重みづけを決定してアンサンブルする方法
- (コンペ終了後に公開) Fill missing for train data by LightGBM
- trainデータの欠損値をLightGBMで予測し、その結果を用いて学習する方法 (LBで0.02~0.04改善したらしい)
上位 Solution
年末年始のためか、まだあまり多くのソリューションは公開されていません…。
この章は随時更新していく予定です。
Public 1st place solution (private 497th)
https://www.kaggle.com/c/ashrae-energy-prediction/discussion/122796
まずはshake downしてしまいましたが、publicLBで1位だった方のソリューション
- Feature Engineering and Feature Selection
- 18特徴量のみ。いろいろと試したが効かなかった
- dew_temperatureについて、feature importanceが高かったが取り除いた方がCVが良くなった。(air temperatureが重要でdew_temperatureは悪影響を与えているのでは?)
- siteidand_meterといったCategorical Multiplicationが少しだけ効いた
- Validation Strategy
- 1~6月・7~12月をtrain, validに分割(half-and-half kernel と同等)
- outlier removal (最重要ポイント)
- 時系列にプロットしてデータをよく観察して、100以上のルールを作って外れ値を除去。
- Examples of effective rules: “Meter 0 and long 0 segment”/”Meter 2 and start before April and long 0 segment”/”0 segments in many building at the same time”/”day average is too small in January comparing with December”.
- Single Model
- LightGBMのみ。Catboostやtime-series basedなモデルも試したが、良くなかった
- Ensemble
- 32個のLightGBM (4random seed)
- 2 -> [1-6] train model or [7-12] train model (important)
4 -> 4 random seed average (effective)
2 -> Remove all suspicious outlier or remove only obvious outlier (slightly effective)
2 -> Modify site0 electric units or not (almost no effects)
- 2 -> [1-6] train model or [7-12] train model (important)
- 各モデルの重みづけが重要であった
- 基本的に、1-6月modelよりも7-12月modelのほうが重みを大きくする。(7~12月の方がtestデータに近い時期のデータだから)
- 7~12月のtestデータを予測するときは、7-12月modelの重みを大きくする
- trainデータの7~12月で外れ値が多い場合は、1-6月modelの重みを大きくする
- 32個のLightGBM (4random seed)
- Post Process
- サブミットする前に時系列プロットし、後処理を検討
- piecewise linear function(区分線形関数)を用いて最小値を修正?(ここあまりわかりませんでした…)
- Leak
- サブミット前にリークデータを置換
- 学習データには使わない (アンサンブルの重みづけの最適化には使っている?)
2nd place solution
https://www.kaggle.com/c/ashrae-energy-prediction/discussion/123481
- Preprocessing
- 1449 buildingをすべてマニュアルで確認して外れ値除去
- Feature Engineering
- Modeling
- Post Processing
- https://www.kaggle.com/c/ashrae-energy-prediction/discussion/123528
- 外れ値(ゼロに近い値)を取り除いたことで、データ全体の平均が大きくなってしまう。そのため、モデルが大きな値を出力しやすくなっている?
- 0.8~0.9をかけることで、LBが改善した
- Ensemble
- meter = 0: 30% XGB-bagging + 50% LGBM-bagging + 15% CB-bagging + 5% FFNN
meters 1, 2, 3: 30% XGB-bagging + 50% LGBM-bagging + 20% CB-bagging - CVスコア, LV, Leakスコアのそれぞれを見て重みを判断
- meter = 0: 30% XGB-bagging + 50% LGBM-bagging + 15% CB-bagging + 5% FFNN
- Leak
- サブミット時の置換のみ
9th place solution
https://www.kaggle.com/c/ashrae-energy-prediction/discussion/123525
- CVスコアとHold outとLBスコアの相関が取れるようにすることに力を注いだ
- LightGBM (x7), CatBoost (x4), Neural Network (x4), LiteMORT (x1)のアンサンブル
- 特徴量はシンプルなもののみ。(最高でも15個。平均で12個)
- Cleansingや気象データの補間は重要だった
My solution (297th → 2053th)
ここからは私のクソ雑魚ソリューションです。
本格的に取り組み始めたのはコンペの締め切りの約3週間前からでした。この頃にはリークはほぼ公開されて落ち着いており、センサデータの取り扱いには興味があったのでshake覚悟で参加することにしました。
基本戦略
ASHRAE- KFold LightGBM - without leak (1.08)のカーネルを修正していく形でスタート
サブミット時にはすべてのリークデータ(site_id=0,1,2,4,15)を置換して提出
リークしたサイトはprivateには使わないと公式に発表されていたので、それならば固定した方がリークしていないサイトの評価がしやすいと考えていた
site_id=4は使わない方がLBが高くなる?という説もあったが、全部使っていた
リークしたサイトのデータ(2017~2018)は学習データに加えた
また、リークしたサイトはtrainのみに用い、validにはリークしていないサイトのみを用いた。(リークしていないサイトに最適化させたかった)
特徴量は基本的なもののみ。lag featureやcount encoding, target encoding等も試したが、私の手元ではCVが改善しなかったので使わなかった
CVの切り方
- 基本的にはKernelやDiscussionで議論されていた通り、2foldを検討
- リークしたデータをプロットすると、1年を通したトレンドがありそう
そこで、Train・Validに使うデータをずらして学習させた(下図のイメージ)
(「時系列は未来の情報を使うべきでない」と基本的に言われていますが、月(=季節)の情報の方が重要と考えていました。あまりよくなかったかもしれない。)
CVの切り方とスコアは以下の通り
この6モデルをCVスコアの重み付き平均でアンサンブルしたところ、CV: 0.8763, LB: 0.988
上から3モデルでのアンサンブルではCV: 0.8673, LB: 0.980 という結果に
- 切り方によってCVスコアが大きく異なるのは、2つのfoldで季節性が似ているか似ていないかが影響していたと思われる。(下図左のように2つのfoldで特徴が異なると精度が低く、 特徴が近いと精度が高くなるはず)
この後、seed average(x10)してベスト公開カーネルと平均をとり、LB: 0.965(銅圏内)に到達。このモデルを最終提出していればprivateでも銅メダルを獲得していました。
敗因:pseudo labeling
少し前に「回帰問題でもpseudo labelingが効く」とTwitterで話題になっており(たしかatma cupの時だったと思います)、気になって本コンペでも実装しました。
- pseudo labelingとは、1度予測した結果をtestデータの「疑似的なラベル」とし、trainと一緒に学習させる方法。koshian先生のQiita記事が詳しい。よく「Data Augmentation」の一種として使われると誤解されがちですが、どちらかというと「正則化」の一種らしい
- 実際には疑似ラベルの丸暗記を防ぐために、
- 2017のpseudo label + train(2-fold) → 2018のtestを推論
- 2018のpseudo label + train(2-fold) → 2017のtestを推論
というように学習・推論させた
スコアは以下
これをベストカーネルとアンサンブルしたところ、LB: 0.964と0.001改善。CVもLBも良くなったことから、「pseudo labeling最高やん!」と思っていました。
- (今思えばCV良くなりすぎ?その割にはLB変わってなさすぎ?と疑うべきだったのか…)
最終サブ選択
- ベストカーネルはLeak部分の精度が高くなるように重みづけしてアンサンブルする方法を用いており、個人的にはリークのサイトにoverfitする可能性高いのでは?と考えていました
- よって、2つ目のサブミットはpseudo labelingを用いてベストカーネルとアンサンブルを取らないもの(LB: 0.979)を選択
結果
- めちゃめちゃshake downしました。普通にちょっと泣きそうになるよね。
- ただ、自分の今のレベルをある程度知ることができたので、参加したことに後悔はありません
- 上位陣はやはりデータをよく観察しているなと思いました。なにかすごい欠損処理をしているんだろうなと思っていましたが、手作業で削除しているチームも多かったのが意外でした
- 銀圏内にタッチするにはアンサンブル前提でより様々なモデルを作る必要があると思いました
最後に
ここで直近行われたセンサデータを用いたコンペを見てみましょう。
電線コンペ(https://www.kaggle.com/c/vsb-power-line-fault-detection/leaderboard)
地震コンペ(https://www.kaggle.com/c/LANL-Earthquake-Prediction/leaderboard)
ASHRAEコンペ(https://www.kaggle.com/robikscube/ashrae-leaderboard-and-shakeより)
いやいや、難しすぎじゃないですか。。。
しかし強い人は強いんですよね。これらの複数で上位に入っている方もいますし、結局実力なんでしょうか…。
「なんでデータサイエンティストやってるの?」参加レポート
「なんでデータサイエンティストやってるの? 〜 思い描いていた自分を思い出すために。 vol.4」というとてもエモいイベントに参加してきました。
登壇者が豪華で話が面白く、キャリア論や内面的動機の話をたくさんしてくださり、とても良いイベントでした。 かなり踏み込んだ話もしてくださったため、本記事ではあまりプライベートなことは書かないようにしつつ、心に刺さった部分をまとめました。 参加枠や日程の都合で参加できなかった方に雰囲気だけでも伝われば幸いです。
1. ユーザベース 小副川 健さん
会場を貸し出している株式会社ユーザベースのChief Data Scientistの方。
前職は他企業のデータ分析のコンサル的なことをされていたそうで、
外部のデータ分析と自企業における内部のデータ分析を両方経験してみての話が印象的でした。
データサイエンティストの好きなところ
- 適切なデータがあれば知らない分野の課題にも携われる
- 研究・ビジネス・エンジニアリングの全てに関われる
他企業のデータ分析と、自企業のデータ分析の違い
- 他企業のデータ分析の特徴
- いろんなデータに触れることができる
- 顧客のデータの理解が難しい
- 蓋を開けたら使えるデータではなかったということもよくある
- 自企業のデータ分析の特徴
- 課題のオーナーが近くにいるため密なコミュニケーションが取れる
- データが足りなければ自分で集めることができる
- データ活用の業務におけるアクション設計までできる
- 今はデータがなくても、今からデータを取り始めれば数年後は実現できる
- どちらのほうがいいという話ではないが、今は自企業のデータ分析が楽しい
2. ブレインパッド 吉田 勇太さん
ブレインパッド新卒5年目のシニアデータサイエンティスト/グループリーダー。白金鉱業というイベントの主催の方。
なんでデータサイエンティストに?
- 意味がある仕事と感じられるから
- 非効率の解消、無駄の排除、プロの勘どころの継承、局所解からの脱皮等ができ、社会をよくすることができる職業である
- 仕事を単なる業務ではなく人生の意味にしたい (あってもなくてもいい仕事はしたくない)
- 人の生活や人生をより健康的に豊かにできる!
また、話の中でメルカリ樫田さんの以下の記事を引用し、分析から意思決定をサポートする重要性についての話も印象的でした。
例えば、すごく心配性の人に「明日雨降りそうって聞いたけど降水確率って何%?」と聞かれるとします。「90%と10%だったらどう変わるの?」と聞き返したら、「どっちみち傘を持って行きます」みたいな。
これですと結局、意思決定は変わらないので、分析する必要はないですよね。実は、こういうことって結構あるんですよ。
3. マスクド・アナライズさん
皆さんご存じイキリデータサイエンティストのマスクマン。話がとても面白くて爆笑をかっさらっていました。
いろいろなことがあったけれど、ずっとIT業界で働いているのはなぜか?
- 「普通の人が30年かかるところを、1日でできるからですよ」(漫画:サンクチュアリより)
- ↑のセリフ、実はヤクザのセリフ
- そう、IT業界はヤクザと同じくらいエキサイティング!
データサイエンティストと同じ能力が求められる職業とは?
ロールモデルにすべき人物像とは?
- そう、獣神サンダーライガーですよね
- 身長が小さい少年がメキシコでの修行等を通してマスクマンとなり、現在では人気プロレスラーになった
- 同じマスクマン同士でイベントを開催する調整力や行動力等、データサイエンティストも見習うべき部分がたくさんある
- 詳しくは自伝を読むべし
データサイエンティストにキャリアプランはあるのか?
- そんなものはない。
- 獣神サンダーライガーのように、自分の道は自分で切り開くべし
4. 日本経済新聞 石原 祥太郎さん (u++さん でおなじみ)
u++さんのブログに資料とイベントメモがあるので、こちらをご覧ください。
よくデータサイエンスはそれ単体よりも、他の分野との掛け算になったときにより力を発揮する、と言われますが、 「メディア」×「データサイエンス」という道を切り開いているu++さんは強いなと思いました。
5. メルカリ/メルペイ 樫田 光 さん
今をときめくメルカリのデータサイエンス部隊のヘッド。noteも有名。
35歳であるということ
データ分析の専門職になったのは30歳。10年前の25歳のときには現在のようになっているとは全く思っていなかった
- 「ひとは1年でできることを過大評価し、10年でできることを過小評価する」
- 何かを始めるのに遅すぎることはないのかもしれない
26歳のときの英語での仕事が一つの転機に
- 「データ」や「数字」は世界共通言語と知る (英語がわからなくても、データや数字を出せば納得してくれた)
- 資料を準備する大切さを知る (英語に自信がなかったのでめちゃめちゃ準備した経験が、今も役に立っている)
なんでデータサイエンティストやってるの?
- 自分の好きなこと(疲れないこと)がやりたかった
- 人間向き不向きがあるのはしょうがない
- データを準備する作業は辛くなく、いつまでもやってられた
- 生存戦略とやりたいこと=「ビジネスと開発の間」
- 「21世紀に生まれたのだから、21世紀にしかできないことをしたい」
なぜメルカリで働いているのか?
- 前職で3年はデータ分析の修行をしようと思っていた。(周りにも言っていた)
- しかしメルカリの中の人からずっと誘われ続けていた
- 大きなチャンスをつかみたいなら「自分のタイミングで」というのは通用しない。(自分の勝手な3年のサイクルで、10年に1度のチャンスをつぶしてもいいだろうか?という問いへの転換)
- 結果、約1年半でメルカリに
- 「ギターが上手くなるのを待っていたら、君はおじいちゃんになってしまうよ」(甲本ヒロト)
- 何かを始めるのに早すぎることはないのかもしれない
33歳でマネージャーに
- マジでやりたくなかった
- しかし、「やるか・やらないか?」ではなく「いつかやるなら今がベストか?」という問いへ転換した
- いつかは通らなければならない道であり、だとすればメルカリの環境はベストであるはず
まとめ
- キャリアはいい意味で思い通りにならない
- 5年後どうなるかはわからないしそれでいい
- (データサイエンスは課題設定が重要といわれるが) 自分に対しても適切な問いを立てる
- Yes or No は実はほぼ決まっていて、「今決断するか、先延ばしにするか」という問題であることも多い
- 適切な問いに変えて、自分に問いかけるモーメントを逃さない
感想
5人とも生き生きとトークをされており、データサイエンティストという職業に誇りを持っているのが伝わってきました。
最近はデータサイエンティストのキャリアが不透明とTwitterで話題になったり、 私個人としてもこの先どこへ向かうべきか不安やもやもやするところがあって今回参加したのですが、改めてデータサイエンティストっていい職業だな~と思い直すことができました。 またキャリアに関しても、「将来どうなるかはいい意味でわからないしそれでいいが、自分の道は自分で切り開くしかなく、適切なタイミングを逃さないことが重要」というメッセージが心に残っています。
参加できて本当によかったです。登壇者や運営の皆様、本当にありがとうございました。
最後に
宣伝しろと某マスクマンに言われたので貼っておきます。皆さん買いましょう。
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